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y+とは何ですか?

回答
y+=u*•y/ν
 
ここで、νは動粘性係数、yは壁面からの距離、 u*は壁面摩擦速度です。
 
流れが乱流状態にあるとき、
無次元距離y+と無次元速度u+に規格化したとき、
ある分布に従うことが知られています。
ここで、u+=u/u*(uは速度)と定義されます。
分布は、模式的には下図のようなものです。
 
No00068_1
 
このうち、0<y+<6の領域は、粘性底層とよばれます。
この領域では流れは層流に近い状態となっており、
u+とy+の間に以下の関係が成り立ちます。
 
u+=y+
 
6<y+<30は、層流状態から乱流状態へ移行する領域で、遷移層と呼ばれています。
 
30<y+<1000の領域は、乱流による流れや熱の拡散が卓越する領域です。
この領域では、u+とy+の間に次のような関係が成り立ちます。
 
u+=ln(y+)/κ+A
 
ここで、κ(=0.4)はカルマン定数、A(=5.5)はモデル定数です。
このような関係が成立していることから、この領域は対数領域と呼ばれます。
 
 
以上の経験則を踏まえて、STREAM、熱設計PAC、SCRYU/Tetraでは、
y+の値がどの領域に入っているかに応じて、
壁での条件を以下のように自動的に切り替えます。
 
なお、このy+の計算に必要な位置yとしては、
STREAMや熱設計PACでは、要素中心で流速を持ちますので、
第一メッシュ(壁面に隣接するメッシュ)の高さの半分の値が用いられます。
SCRYU/Tetraでは、節点で流速を定義しますので、第一メッシュの高さが用いられます。
 
<壁条件の切り替え>
 
・高レイノルズ数型乱流モデルを選択した場合
 
粘性底層と対数領域の曲線を外挿したものの交点であるy+=11.6を境に、
y+<11.6のとき、層流と同じノースリップ+熱伝導条件、
y+>11.6のとき対数則条件、というように行われます。
 
ただし、高レイノルズ数型乱流モデルは、y+が対数則の範囲に
入っていることを前提としていますので、できるだけ30<y+<1000となるように、
メッシュの切り方を工夫することをお勧めします。
 
・低レイノルズ数型乱流モデルを選択した場合
 
この乱流モデルは、乱流エネルギーの生成領域である壁近傍領域y+<30を
より忠実に捉えることを目的としたモデルです。
このモデルでは、デフォルトで壁条件として低レイノルズ数域包括型壁関数が用いられます。
この関数ではy+による切り替えではなく、解析解に基づく
壁条件が与えられますので、y+に対する依存性の小さい解析ができます。
 
一方、壁条件として「包括型壁関数を使用しない」(STREAM)
または「対数則ベースの壁関数」(SCRYU/Tetra) を選択した場合は、
粘性底層の領域y+<y+cで厳密条件、y+>11.6のとき対数則での壁関数型条件、
y+c<y+<11.6のときは、その両者をブリッジした条件が自動的に切り替わるようになります。
y+cの値は、STREAMと熱設計PACでは1.0、SCRYU/Tetraでは5.0です。
 
ただし、低レイノルズ数型乱流モデルは、y+<1.0のとき良い精度を与えますので、
なるべくy+がこのような小さな値となるようにメッシュを切ることをお勧めします。