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圧縮性解析の流入圧力とはなんですか?

圧縮性解析の流入圧力とはなんですか?
  • マッハ数が1を超えない範囲で、圧縮性解析の境界条件は、非圧縮と同じと考えていただいて構いません。
     
    非圧縮では・・・流入流量(結局は速度)が与えられた場合、出口圧力を基準にして、上流に遡るにつれ、圧力が流路の圧損分だけ大きくなって行きます。
     
    圧縮性解析でもまったく同じ事です。入口が流量規定や速度規定の場合は、入口圧力は、出口圧力と、流路の圧損から決まるものであり、境界条件として指定するものではありません。
     
    では流入圧力設定はなんなのか?ということですが、これはあまり正しい設定ではないのですが、流入密度を決めるときだけ、この値が使われています。ところがカット面等で見たときの圧力は、流路圧損による圧力分布が表示されているので、矛盾が生じます。流入圧力は使用しない方が正しい解析となります。
     
    ところで、流入圧力を指定しない場合、体積流量や流速指定では、入口の圧力から密度が決まるため、質量流量は状況に合わせて変化することになります。流れの本質的なところは質量流量で決まりますので、質量流量を設定したほうが解析は収束が良いです。実際の状況として質量流量が既知の場合は、体積流量や流速に変換せず、質量流量を設定してください。
     
    よく生じる疑問としては、既知のデータとして流入速度(体積流量)、圧力、温度がある状況で、圧力を設定せずに捨ててしまってよいのか、という点です。これは残念ながら捨てざるを得ません。あるいは入口を圧力規定とすれば圧力は生かせますが、流速(流量)のデータは捨てられることになります。
     
    非圧縮でも、流路の流量と、圧損を同時に指定することはできません。片方を指定すると、もう片方は解析結果として得られる値になり、それが実測と合致するかどうかは、解析の精度になります。圧縮性流体解析では、流入圧力が密度に影響するので惑わされがちですが、圧縮性でもこの点はじつはまったく同じになっています。
     
    では流入圧力はどのようなときに使用するべきなのかというと、マッハ1以上の領域で流路が完全にふさがれるような場所がある場合です。圧力は音速で伝わるため、マッハ1以上の場所を遡ることが出来ません。この場合、出口から入口まで圧力の情報が遡っていくことができなくなります。このような場合にのみ、入口の圧力が決まらないので、流量規定や流速規定においても、流入圧力を明示的に設定する必要があります。
     
    ちなみに、非圧縮性流体では音速は無限大として扱われることに相当します。その結果、圧力の情報は解析空間のあらゆる場所に、瞬時に伝達することになります。ですから、流量規定や流速規定において、流入圧力を設定することはありません。また、非圧縮ではいかなるときも流入流量=出口流量が保たれますが、これも、入口で流体が流入したという情報は出口に瞬時に伝わっているためです。